私は いつも 自由だった
るるりら



母のことが なぜあんなに嫌いだったのだろう
殴られたことがあるからでもなく
押入れに閉じ込められたことがあるからでもなく
蹴飛ばされたことがあるからでもなく
わたしは母の愛情に満ちた視線が苦手だった

母の片目は失明していて
わたしは たいてい視野の外にいたから
いつも自由だったのに

母と乗る車が走る
あれが海だよというのに ちらと 壁や民家の隙間にある海だと
母の目には映らない
母にとって視野に居ない私は 気配だけの影だから
私であって私でなくて ときどき敬語で話かけられたり 

車の飾りに反射してできた光が虹になって てのひらにおちた
魔法のようだと 見惚れていたら
ほとんどの物を見ることのできないはずの艶めいた声
「それ なあに」

太陽の方角やガラスの角度や うんぬんかんぬんの約束ごとで
できた わたしたち親子の形

笑いは
刹那の虹みたい




かたくなさを
すりぬけてゆく










携帯写真+詩 私は いつも 自由だった Copyright るるりら 2009-09-29 22:54:02
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