Left
小林 柳



もう描きたくないと
イーゼルを蹴って君は出て行った
僕は君の絵がいつも好きだったのに


君は前に言った
キャンバスはこのまま
これ以上にはならないと
絵筆を持ったままで
白い布をじっと見つめていた


僕は君の絵が
とても綺麗だと思っていたのに


何も描かれなかったキャンバスは
倒されたまま横たわっている


残されたスケッチブックは
夕方の風になびいている
めくられる白紙のページ



君のさみしさは手つかずのまま
ここに残っている
開いたままのドアの向こうは
暗くなり始めている

冷たくなった夜風は
君の匂いがした



自由詩 Left Copyright 小林 柳 2009-09-29 00:47:55
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