言霊
奈々


あれは恐ろしい、気持ち悪い子だ

6歳の時に偶然聞いた祖母の声

私の事?
どうして?

混乱する幼い耳へ追い討ちがかかる


早くお迎えがくればいいのに


どうして。どうして。どうして。


相づちを打つ母親


涙すら出なかった
私が祖母を、母を忌み嫌うのに
十分すぎる出来事

そばに来ないで
そんな汚い手で私に触れないで


黒い天井しか見えなかった


唄を唄いたい
やさしい唄
あいの唄
でも
私の中で時は止まっている
鏡の中で私の視線はどこか
遠くを見つめている

やわらかな光が街を通り抜け
新たな日が動きだしても
その光は私の心には届かない


誰かに聴かせる為に
唄った言葉
誰かに届けたかった想い
意味の無い文字の羅列となり
言葉と共に
私は自分の存在を消滅させた


もう何も唄えない


自由詩 言霊 Copyright 奈々 2009-09-28 20:19:43
notebook Home 戻る  過去 未来