母へ
ミツバチ

母は日々
鏡の前に座っては
黒くて長い
きれいな髪を
時間をかけて
丁寧に
とかしています

幼い私は
後でそっと
覗き見しては
母の美を
子供ながらに
感じていました

時々私も
母を真似
鏡の前で
短い髪を
とかしてみます

母はそれを
優しく見ては
くすくす笑い
私の傍へ
そして私の
短い髪を
ゆっくりゆっくり
とかすのです

貴女は私の
憧れでした
もちろん今も
変わりませんが
あの時間が一番
幸せだったのです

私の髪を
とかしながら
私と話を
しましたね
いつもなら
下の子達に
とられる貴女を
今だけは
一人占めだと
嬉しかった

ねぇ母さん?
覚えていますか?
あの頃の事
貴女と私
二人の間に
様々な時が
流れて来ましたが

今度私が
帰ったら
また
昔のように
私の髪を
とかしてください


自由詩 母へ Copyright ミツバチ 2009-09-28 11:50:39
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