四人の旅
生田 稔
四人の旅
朝がきて旅発つ志賀は曇り空秋分の日の我らが家族
心晴れぬ目に緑なる両脇の草花にふとふと心やるなり
ゴリアテと聖なる書に記されど一人の勇士神の子ならずや
思い出の西宮過ぎゆけばモーツアルト、ナハトムジーク
淡路島過ぎゆく道の真直ぐなるわがゆく果ての空の青さよ
四国鳴門の街をゆき道ぞいの海のほとりの料理屋に座す
四人はまち造りを食すれば大味にてそさくさとする
讃岐にはさぬき饂飩のあるをきき四人で食ぶる秋の昼すぎ
松山の「ふなや」に泊まり晴れの朝料理は品よし四国良し
道行けば鴎とぶとぶ鞆の浦陽は傾きて波静かなり
聖書読みその業に精進し今は仏のみ教えもまた
瀬戸の海波は静かに打ち返し心はしきり思いいるなり
酒と食合わせばよしと思えども昼酒呑むはふさわしくなし
空海のゆかりの寺の済世橋渡りつ見れば人はぞろぞろ
澄みきった池の水かきわけて亀泳ぐ善通寺
陽はかげり藍色の海眺めつつ人生は一つ道一つしか
クツクツと笑えば今日も青空で風そよとして夕暮れちかづく