土曜の夕暮れ
……とある蛙
夕暮れ
みんな家路に帰ろうと
一人ぐずぐず
オニのまま
悔しいままで
夕日を睨み
そのまま暮れて薄暗く
ぽつりぽつりと街灯が
道をぼんやり照らす頃
オニも泣き顔拭かぬまま
やさしい家路に着くのです。
夜
傘のついた電球が
もちろん木の電信柱
その回りは明るいが
グラデュエーションある暗闇
街灯に蛾が集まって
存在感のある暗闇
暗闇の中にいろいろな
ものが本当は生きている。
街中の夜に本当の闇がある。
だれかがほくそ笑んでるか。
それが子供の世界では
普通のことでありました。
暗闇はとても怖いもの
夜は早く眠るのです。
みながそう思ってた
そんな時代に生きていました。
音は恐ろしいほど少ない
夜は静かが当たり前
闇は音を吸い込んで
闇は色を吸い込んで
闇は人をも吸い込みます。
朝
朝は突然やってくる
子供の眠りは深く長い
深いがいつも夢を見る。
夢が突然途切れたころに
正義面した朝がやってきます。
休みの朝は遅かった。
八時前でも静かなもので
朝だ六時だ早朝だ
本当に早朝と思われて
新聞配達と豆腐屋と
母親ぐらいが朝の顔
休みの道路は
空いている
道の真ん中寝転んで
車の来ない広場です。
早起きした七歳の僕は
道の向こう弁護士さんの
家の玄関の縁石に
パジャマ姿でしゃがみこみ
大きなあくびをファーとして
朝日の中に微睡(まどろ)んで
母がごはんで呼ぶまでは
本当に
本当に
幸せな
とっても暖かい陽だまりです。
静かな
静かな
陽だまりです。
この文書は以下の文書グループに登録されています。
子ども時代