トリに私は憧れる
N.K.
ヒトはトリに憧れるが
トリはヒトのことを相手にすることなど断じてないだろう
ヒトは見上げ トリが舞う空に向けて想うのだ 例えば
A picture ---この言葉を唇に乗せるヒトは、
「絵画」とか「写真」とかの在る世界の中で
「絵画」と「写真」の間に渦巻く深淵など
あっさりと飛び越える
傍で見上げる私の目には
「絵画」は「写真」に憧れ
「写真」は「絵画」に憧れる
私は空を映して思うのだ
ああ、例えばpictureという言葉が私にあれば
「写真」と「絵画」の裂け目など
軽やかに飛び越えて
「絵画」は「写真」と和解をするのに
ヒトはトリに憧れるが
トリはヒトのことを相手にすることなど断じてないだろう
なぜなら
ヒトがバベルの塔を作ろうとした時も 崩れた後でも
トリは言葉なんぞを持たなかったからだ
今日もトリは言葉をもたないだけ
軽やかに 飛んでいくのだ
天と私の間を
「写真」と「絵画」の間を
「意味」と「意味」との間を
トリの飛ぶのに不思議はないけれど
そのトリの軽やかさに私は強く憧れる
まるで天国へ憧れるように