悪いもの
キキ

八月、うずくまっている

土のうえに手を置いて
雨がその地面を濡らさないかどうか、君と賭けをする
そうして動けないものだから
悪いものたちがやってきて
首の後ろあたりに留まっていく

君はわたしの横に座って
雨粒の大きさを測っている

 *

スカートの裾を伸ばしている隣の女の子の
横顔には眉毛がなくて
この世のひとではないみたいだ
少しずつ形がくずれていって
襞だけがただしく膝のうえに折りたたまれていく

昨日食べた梨

わたしは電車に乗っている
どこかへ行くことが大事だと喋っている
悪いものたちがついてこられないスピードで
動きつづけることが肝心だと

君はわたしの横にではなく
向かいの席に座って
大人しく聞いている
そうしてひととおり語り終えると
わたしたちは手のひらを上に向け、ふたたび静かな賭けを開始する





自由詩 悪いもの Copyright キキ 2004-09-13 02:25:49
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