愛がない一日
nonya
I がない一日でした
アイがない一日でした
自分が留守な一日でした
ただ流されていくばかりでした
土左衛門なのでした
いくつもの橋の下をくぐり
今更ながら橋の憂鬱を知り
壊れたがっていた玩具や小魚と一緒に
能天気な空の欠伸に見惚れていました
EYE がない一日でした
アイがない一日でした
何も見ていない一日でした
闇雲に突き進むばかりでした
手負いの猪なのでした
いくつもの標識にぶつかり
今更ながら標識の怠惰を知り
死にたがっていたバイクや秋風と一緒に
ビルとビルの隙間にある楽園を探していました
愛がない一日でした
アイがない一日でした
なんて格好つけて書いても
本当は愛の味なんて
少しも知らないのでした
それなのに愛がない一日の後味だけは
なぜか知っているのでした
苦くて黒色の夜の海の味ですよ
酸っぱくて虹色の朝の道路の味ですよ
もしかしたら
愛は電球なのかもしれません
愛は水道水なのかもしれません
愛は携帯メールなのかもしれません
あまりにも当り前すぎて
味が分からないものなのかもしれません
もしかしたら
愛は呼吸なのかもしれません
愛は瞬きなのかもしれません
愛は掌の温もりなのかもしれません
なくしてしまった時にだけ
思い知らされるものなのかもしれません