黎明/Airport limousin
月乃助


かならず 
抜け出してみせる
それが
やすぼったい紙ひこうだろうと
この手で とばすだけ
歯をくいしばって立ちすくんでいた
こんな街から それしかなかった
脱出/逃亡/降参/妥協…
なんでも よかった

目をさましたら 蘇生し
あたらしい黎明を手に入れて もういちど
しらぬ街で 翼をひろげる
水平なみわたす限り 明瞭に
その始まりが、とうとつに
ころがり込んできたから
うかれてたんだ

たとえば
追い越していく車たちの
リムジン・バスから見えるビルだらけの景色
炯々とネオンのつづく それが、川にとぎれた暗闇の
次の世界でも待っている夢 
打ち消したかったから ふりかえり
こなごなに たたきつぶした

あかりの点々と走る
漆黒に染まった夜から
ひざを抱え 背をむけた部屋も
明日さえも投げ捨て
無色になった身ひとつで
旅立つんだ

窓にうつった ぼやけたふたり
泥だらけのおれを ひろってくれた
おまえだから
かならず帰ってくるって 約束した

目をとじるおまえの
手をにぎりしめながら 
すべてをのみこんでしまう 
髪の香に 淋しさがたちのぼり
また会えるって 強がる
いつもの元気な肩に けれども 
ふりむけば 泣きそうな
顔がみれなくて、

よりそう髪のすきまに
悲しみをうずめた
終着などないエアポートいきの
混濁したハイウェー

といきに 
海の広さほど はなれるんだって、
別れはいやだって つぶやいた 
最後の言葉が胸にせまり、
幼子のように
目をあかくするのを
かくしてた

あれから
どうしてる
残してきた
言葉を思い出したりするか
それとも、もどってこないと
投げだしてしまったか、

いくども 指の間に水をすくうよう
はかなく季節がめぐってきても
おれはまだ、想いを石ころのように
こころにしずめたまま
ずっと あきらめずにいる から
また、めぐりあったあの日のように
あの街のどこかで
出会える日がやってくる
約束は、わすれない
あの時の、
いつの時も







自由詩 黎明/Airport limousin Copyright 月乃助 2009-09-23 01:07:10
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