薔薇の衣を纏って眠るさなぎ達のための詩
瑠王

人類は、まだ生まれたばかり



時の口がガラスの乳房にぶら下がり
刻々と私の砂丘は完成されてゆく
埋もれゆくさなぎは薔薇の衣を纏って眠る
彼が(もしくは彼女が)飛び立つのを目にすることはないだろう
それでも、私の死を超えて羽ばたき
この砂丘を後にすることを私は知っている


愛用のペン先は何より先端
向こう見ずに私の毎日は綴られてゆく
昨日の夜でさえベッドの上で褪せてしまう
彼らが(もしくは彼女らが)薔薇の筆をもって色をつけるのだが
どんなに美しい絵画も劣化を免れることはない
それでも、この砂の墓の上を訪れ
誰かが手を合わせる日は必ず来るだろう


花の一生を見る限り
私が一生で答えを得ることはないだろう
捻けた薔薇は私の動脈を受け継いで眠る
彼女が(もしくは彼が)私の引出しの奥の置手紙
血は枯れてしまっても意思の花びらが赤を保つだろう
先駆者達がその子らを私達に残したように
埋もれゆくさなぎは薔薇の衣を纏って眠る


人類は、まだ生まれたばかり
答えを出すにはまだ早すぎる

私は願う
私達が残した種に世界が水を絶やさぬようにと
その種がむしろ絵画的なものではなく
先に絶えてしまった楓の様な掌のひとかけであるようにと

私は願う
私達がゆくあてのない風ではなく
途方もない砂丘の一粒一粒であることを




自由詩 薔薇の衣を纏って眠るさなぎ達のための詩 Copyright 瑠王 2009-09-23 00:43:11
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