人類は、まだ生まれたばかり
時の口がガラスの乳房にぶら下がり
刻々と私の砂丘は完成されてゆく
埋もれゆくさなぎは薔薇の衣を纏って眠る
彼が(もしくは彼女が)飛び立つのを目にすることはないだろう
それでも、私の死を超えて羽ばたき
この砂丘を後にすることを私は知っている
愛用のペン先は何より先端
向こう見ずに私の毎日は綴られてゆく
昨日の夜でさえベッドの上で褪せてしまう
彼らが(もしくは彼女らが)薔薇の筆をもって色をつけるのだが
どんなに美しい絵画も劣化を免れることはない
それでも、この砂の墓の上を訪れ
誰かが手を合わせる日は必ず来るだろう
花の一生を見る限り
私が一生で答えを得ることはないだろう
捻けた薔薇は私の動脈を受け継いで眠る
彼女が(もしくは彼が)私の引出しの奥の置手紙
血は枯れてしまっても意思の花びらが赤を保つだろう
先駆者達がその子らを私達に残したように
埋もれゆくさなぎは薔薇の衣を纏って眠る
人類は、まだ生まれたばかり
答えを出すにはまだ早すぎる
私は願う
私達が残した種に世界が水を絶やさぬようにと
その種がむしろ絵画的なものではなく
先に絶えてしまった楓の様な掌のひとかけであるようにと
私は願う
私達がゆくあてのない風ではなく
途方もない砂丘の一粒一粒であることを