この一瞬のために
もこもこわたあめ

今にも泣き出しそうな 夜闇の中
一羽のカラスが 仲間にはぐれ咽鳴いている
今にも泣き出しそうな 夜闇に紛れて
一組の男女が 友に祝福されて泣いている
  
   -刹那-
   あなたのあたたかな体温に触れた 気がした
   羊水よりもぬるく そして やわらかい 感触

何一つ遮る音のない 静寂の中
0,1秒でも長く 遠く届けとねがう虫の声
何一つ遮る音のない 静寂から
秋の夜を愛でる宴の 陽気な人たちの声
   
   -刹那-
   あなたのひかえめな吐息が鼓膜を掠めた 気が した
   あなたの匂いを僕の中にしみこませる 響き ゆっくりと じっくりと

規則的に刻まれる (とき)の中
残虐さに美しいとすら感じる宇宙の 永遠
規則的に刻まれる (とき)の中
儚くも散りゆく永遠を 作りだしている有限

   -刹那-
   あなたの瞳を見つめる 僕を 見つけた 気が し た
   三日月よりも 鋭く 寂しい色を湛えて

今ははるか遠くの空の(もと)にいる 
             あなたへ

     「刹那」
      この一瞬のために僕は生きている


自由詩 この一瞬のために Copyright もこもこわたあめ 2009-09-22 20:28:20
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