この一瞬のために
もこもこわたあめ
今にも泣き出しそうな 夜闇の中
一羽のカラスが 仲間にはぐれ咽鳴いている
今にも泣き出しそうな 夜闇に紛れて
一組の男女が 友に祝福されて泣いている
-刹那-
あなたのあたたかな体温に触れた 気がした
羊水よりもぬるく そして やわらかい 感触
何一つ遮る音のない 静寂の中
0,1秒でも長く 遠く届けとねがう虫の声
何一つ遮る音のない 静寂から
秋の夜を愛でる宴の 陽気な人たちの声
-刹那-
あなたのひかえめな吐息が鼓膜を掠めた 気が した
あなたの匂いを僕の中にしみこませる 響き ゆっくりと じっくりと
規則的に刻まれる (とき)の中
残虐さに美しいとすら感じる宇宙の 永遠
規則的に刻まれる (とき)の中
儚くも散りゆく永遠を 作りだしている有限
-刹那-
あなたの瞳を見つめる 僕を 見つけた 気が し た
三日月よりも 鋭く 寂しい色を湛えて
今ははるか遠くの空の(もと)にいる
あなたへ
「刹那」
この一瞬のために僕は生きている