乱太郎

夜が起き出して
今夜はと舞台衣装に着替える
黒い不安と白い恐れの鍵盤を
交互に叩くその曲は
泡立つ恍惚の光り

濡れた海を拭くように
満月の落した布が
昼と夜の境界線から漂う
かもめはいない

見えない声の渦巻きを
時折風が木の蔦を辿って
鼓膜の外側に運んで
聞こえているかと尋ねている気がする

すすり泣く女の声が
谷間で流れて

希望を失った女の涙が
星座をくぐり抜け

夜明けを憎みながら
幻想曲の胎内で呼吸する


自由詩Copyright 乱太郎 2009-09-22 18:01:04
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