青く染められた物語
小池房枝
青いバラを見ましたか
青いバラを見ましたよ
花屋さんのでっかいガラス張り冷蔵庫の中で
束になって真っ青してました
青いバラのニュースは聞いていたので
とうとう出回るようになったかと
青いバラ確かに真っ青で
青すぎて染めたような色でした
遺伝子組み替えで作出された色は
なるほどかように人工的かと
確かにバラなのに
きれいだと
美しい花だと思えなくて
でもそれは技の罪ではなくて
バラが青くあることへの奇異な印象のせいかもしれない
思えば花を
きれいだと思ったり思わなかったりする
そのようなの思いの正体とはなんなのか
花びらの中の水脈にそって
青さが脈打って見えました
さてあくる日の花屋では
きちんと値札が立てられていて
「青バラ、染め」と堂々と
1本260円
遺伝子組み替え技術に前後して
真っ青に染める技術も開発されていたというわけ
改めて
ネットで確かめてみたバイオのバラは
ブルームーンや
スターリングシルバーのような
そんな優しい色をしていて
いずれ彼らとも街角で
どこか植物園の薔薇園で
視線を交わすことができるでしょうか
ベンデラ・ブルーと
出会ったように
生まれてきたのだから咲きなさい
生み出されずに生まれてくる命などありはしないのだから
両の手の指にも足りない数から
二万種以上も作り出されてきた先達たちとともに