涙プールにて
みぞるる
悲しいと思うから
悲しいだけだ
誰かが遠くでそう囁いた
鼻の奥がツーンとして
目の周りがやけどしたみたいに
熱かった
…
何も知らなかった頃のあたしは
プールで一人っきりになると
潜水ごっこを夢中でこなすことができた
恋を知った頃のあたしは
あの人との遊びを渇望し
触れたい気持ちでいっぱいになる
愛を知ったあたしは
1人プールに佇んで
孤独という言葉に
正面から向き合わなくてはならなくなった
…
寂しいのはきっと
もう会えないせいではない
この悲しみもいつかは忘れてしまうと
わかっていながら
それでも
吹きすさぶ隙間風を
冷たいと感じてしまうぜいたくのせいだ
「愛されることが幸福なのではない。
愛することこそ幸福なのだ。」
そうであるなら
どうしてあたしが
あたしを丸々包み込む水圧に溺れたがるのか
どうしてあたしが
あたしの頬に流れるものを幸せと思わないのか
その答えを
遠くの誰かも囁いてはくれない
…
悲しいと思うから
悲しいだけだ
誰かが遠くでそう囁いた
最後に触れたあの人の手は未だ暖かすぎて
あたしの隙間は
愛では決して満たされないとわかった
そうしてあたしは
涙のプールに溺れていたい