冷めた熱の行方
三奈
“熱が冷めた”らしい。
きっと、時の流れが君の心に入り込んで、少しずつ熱を奪っていった結果なのだろう。
幸福や悲しみ、怒り。
時間には、様々な熱を冷ます効果があるって聞いた事がある。
彼女の私に対する嫌悪感も、時間が見事に吸収してくれたみたいだ。
「アドレス変えました。よければ登録お願いします」
短い一文。
どくんどくん、心臓が早まる。
心に刺さっていた棘が抜けて、そこからじくじくと血が溢れだした。
痛くはない、痛くはないけど。
あれれ?世界がぼやけてみえる。
彼女を“友達”と呼べなくなってから、今年で確か4年目。
あの日、友達という『カテゴリー』から私を追いだしたのは、君だった。
私はただ、拗ねた子供みたいに膝を抱えて
現実から目を背けていただけだったね。
近づく努力をするなんて発想は、頭の中に微塵もなかった。
「了解しました。登録します」
携帯を閉じてどん、とベットにダイブする。
小さな埃が、勢いよく天へ舞い上がるのが見えた。
返した返事。負けず劣らず、短い一文。
でも、気に入ってる絵文字を何個か選んで、できるだけ明るく仕上げた。
返事があったのは、数分後。
そこに書いてあった
「ありがとう」
の文字が、やけに心を刺激した。