クロスロード
ゴースト(無月野青馬)
背中が溶けて痛くなる
「浮腫んだ思いを孕まされたので退職致します」
と言って去った後
首を吊って自殺した女の怨霊が
少女に乗り移った
夜
誰も知らなくていい隔離された世界を
取り憑かれた少女は走る
走る
闇雲に
ある1人の女の意識が少女を先行し始める
具現化し、手に握りしめた顔写真の少年
透明感のある笑顔
思い描いただけで潮を吹きそうになる程に惹かれていた少年を食べに閉鎖した学校に
走る
闇雲に
1人の女のペルソナを連れて
場面転換した場所で
「性悪説だね」
「それは性悪説だね」
浮遊している透明な友達にやんわりと言われた少年
少年の信仰は固まっていた
1.「人の思い出話を聴かない」
ゆっくりと侵蝕されるから
2.「アドレスの類いは教えない」
テレパシーのみで繋がる
3.「自己の中心を確立する」
全ては自己から始まるべきだと
4.「人と関わるべき」
1〜4を守り通す信仰
だけれど、少年
明日の衝突を心配する
見えない<天体>を捜して
行方を不明にしてしまう
眠らずに自転車を漕ぐ
全力で自転車を漕ぐ
<天体>に惹かれているから
突破を目指していく
坂道に差し掛かった時
やんわりと
また
「性悪説だね」
「それは性悪説だね」
と
ペルソナに言われた直後
ブレーキが外れて壊れ
少年は転倒した
倒れた少年
引力に振り回されているだけだった
その少年の真横を少女が駆けていく
接点、この十字路を
一昼夜走り回って
時間軸が乱れて
少女と女は呪詛を叫び
走り回る
バイオリズム
「人はチェスのように操るだけだから笑うしかないね」
少年は
混濁する意識の底で愚痴を言う
「性悪説だね」
「それは性悪説だね」
また、やんわりと、透明な声
倒れたままの自転車のペダルがぐるぐると回り続ける
この十字路で
少年は背中が痛くなる
「帰ろう」と促されて
少年は渋々立ち上がる
天体は今日も遠かった
肉体から既に離れていた