あさい眠りの/orchid
月乃助
典麗の色香は、純白の
輪舞する翅が揺れている
無言なひろがる花弁にぽつねん
ショー・ウィンドーの森の囲いにたちんぼが、
哂い声をあげた夢は、
苔むした褥を足にして
胡蝶の眠りから覚めていく
咲きみだれる、夜のいとなみに疲れ
照らされ蒼ざめたまま
誰もが指をはわしては、
あかりの尽きぬ眠られぬ 蒼茫のベッド
傾ぐほどの 細い身をささえ
いまだに剛毅に たちすくむ
荒れ野にJのさかさ文字
おしろいなど要りようもない濡れた肌は、
みつぐものを悦ばす緑に縁取る紅に、
ちぎれ堕ちる花弁の時がめぐりくる
心待ちする誰もに こたえ返しながら
落ちていく眠りに 揺り起こされ、
「 わたしを 買ってくれるのですか 」
その値に恐れをなすものたちに
それでも、優しく笑いかける
始まりは永劫の楽しみ か ひと夜の遊び
新たな部屋の明かりを胸に焦がれ
幸 それだけをのぞみながら
狭い棚の上に膝をかかえる夜は、
またくる 浅い眠りの小さなベッド に 流れる
乾いた香りのない 蘭のしずくは、