あいまいな秋の地平線
within

夕立/突然の豪雨と雷鳴が轟いた
それは子宮の中で聴いた母の心音のような気がした
時折、去来する淋しさは冥府からの呼び声に思え
無言で空を見上げると、大きな穴が開いていた

依りかかって生きているから失うことが怖くて
周りは親になっていくけど
僕はいつまでも子のままで
ん、俺は立ち止まらんよ/なんて言ってみたいから
そろそろ立ち上がろうか/つまずいたからって
いつまでも寝そべってばかりはいられない

がらんどうになった=空っぽのただの入れ子の肉塊を
偲び続ける
小さな奈落に落ちてしまって、歪んだ苦面/渋面で
小さな挫折をあと何度繰り返せばいいのか
もう終わりにしないか/終わりにしないか
どこまでも続く階段。足を使わずに
エレベータに乗ればよかった
一段上れば、一段増え
無限に続く徒労に
そろそろあきらめようかと目を瞑る
眠ろう、薄い布団と毛布さえあればいい

本物の絶望を知らないから 気安く
詞句にして歌ってみたりするが
あまりにゆるすぎて
ハッと気付いたときに
ひどい失望感に襲われる
もう終わりにしないか/終わりにしないか

ひと気のない寺の境内で石を探すのが好きで
どこか僕を呼んでいるような石礫を
拾い上げる
生物は炭素を通過してきたが
コンピュータはケイ素を通過した
石には精神も言葉もないが
角の取れたそれは変に温かい

天空から落ちる青い石が、燃え尽きて
光となる。その一瞬のきらめきに
誰かが手を合わせる
何も変わりやしないのに、僕は祈る
それがあまりに哀しくて
ポケットの中の石礫は黙り込む

僕は空腹でなければならない
空腹でなければ、人の気持ちが
わからない
簡単に満たすことを覚えてしまえば
堕ちてゆく/堕ちてゆく何処までも
アルカイクスマイルを湛える弥勒菩薩と
口唇を重ねる
絶望と希望の半ばで
くまのぬいぐるみを
抱えて眠る子供のように
無心で明日を祈る
訪れた夜は
黒ではなく青で
吸い込む空気はどこまでも透明で
顔を上げると鼻水が一筋垂れた


自由詩 あいまいな秋の地平線 Copyright within 2009-09-17 18:39:30
notebook Home