ぎんなん
tutty

パキ、パキ

銀杏を剥いている

殻を出刃で叩いてその亀裂に爪を入れる

すると割れる

パキ

固い殻の中から翡翠のような実が見える

実を熱い鍋底に優しくこすりつけてやると薄皮が剥がれ半透明になる

パキ、

店の中は暗くて、蛍光灯で赤と青に薄い三角錐が出来ている

ぢゅっ

隣で先輩は百合根に焼いた鉄串で模様をつけている

ジュッと煙が立ち髪の毛を焦がした匂いがする

パキ、ぢゅっ

おれよう、鼻の骨を鳴らせるんだぜ

パキ、ほんまですかあ

鼻を押してペキ、と口で言いながら笑う

なんぼベタなんですか、それ

パキ、ぢゅう

足下には砕けた殻が堆くなっている

もう夜中なのに

ぢ、ぢ、

ぢゅっ、パキ

明日も朝が来るのか

ッパキ、

ぢゅっ

このベトついた床にキスをしてやろうか

明日も明後日も殻を割って熱い鍋底に優しき重圧を

殻を





パキッ


自由詩 ぎんなん Copyright tutty 2009-09-16 00:04:32
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