左耳
フミタケ

愛がやるせないときは
夢を見ればいい
夢がやりきれないときは
音楽を聴けばいい
音楽に疲れてしまったら
女の子に
カワイイ女の子に電話してみようか
愛がやるせないときは
午前2時の
夢を見て
夢を見たことも
忘れてしまえばいい

金曜日の夜は
君の髪に顔を埋めて泣く

揺らめいているのは
昨日から今日へつなぐ言葉
違うことを言うけど
それぞれ本気なんだね
本気になったの
嫌いになったの
友達でいるの
触れ合いたいだけなの
いつだって
誰にだって
本気だ

人生の表面張力でういているだけの僕
君は海の底の深みから誘うから
時々、潜水して
溺れる
どうしようもない軽さから逃れられない僕は
やがてまた
海面へ一人浮き上がっていってしまう
潜って溺れて浮き上がっては繰り返す
地下鉄
終電車
地上への階段を上がる時の
モヤにまかれた
夜の空の黒は
一人で生きていくにはもう
あまりにも寒々しく
果てしない
メールをくれて
ちょっと忘れる
だいぶやられて

愛し合う日はまだ
一人自転車をこぐ
23時
手をはなす事はとてもじゃなく
灼熱の太陽に灼かれ続ける
24時
痛覚をなくしたように
身体は熱を帯びて
体温は蓄積し
沸点をめざし

左耳で拒む夏至にそっと指で触れ
右耳の甘い白夜をひとしづく舐め

今日までの日々が狂っていたのか
今からの日々が狂っていくのか
わからない
引き裂かれて迷う心を抱き寄せる
抱きしめて抱きしめて
何が変わっていくんだろう
抱きしめたい
抱きしめたい
抱きしめているのに
もう一度
抱きしめたい

東京中のワンルームマンション
そのひとつひとつには
ひとりづつ迷子がいる
それぞれひとつづつ握りつぶして
ぎゅっと小さく握りしめ
星空へと放り投げる
甘えさせてくれる女を待ってる
甘えてくれる女を待ってる
週末にふたりで酔いつぶれる女を待ってる
寂しさから
哀しさから
苛立から
やさしさを取り戻そうと
なんとか逃げだそうとして

裸眼
千切れ雲
くるくる
日傘

奥の方の柔らかいところに
触れてしまった
僕のものなのか
君のものなのか分からない
そう
おなじみのあの痛み
知っていても
気付いていても
匂いが染み付いたまま
その部屋を出て行く
空は青くたかく暗く
見上げる
夜の仕事
全然手につかない
ワリキレナサをくれたあと
眠らないでいて
言葉はただ短く切って送る
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愛がやるせないときは
夢を見ればいい
夢がやりきれないときは
音楽を聴けばいい
音楽に疲れてしまったら
女の子に
カワイイ女の子に電話してみようか
愛がやるせないときは
午前2時の
夢を見て
夢を見たことも
忘れてしまえばいい

金曜の夜は


自由詩 左耳 Copyright フミタケ 2009-09-14 01:14:18
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