おくすりはあなたにひつようだろう
あぐり
二週間に一度
電車に揺られ
ヘッドフォンで耳を塞いでもうなんにも余計な物は聞かないように
通い慣れた踏切/目的地以外は何もわからない駅/ひゃくにじゅうえんで三時間珈琲
先生はどうですかとしか聞かない
私もそれ以外は答えない
(なんでそんなことをするんですかあなたはいつだって)
でも先生、
私の答えは一つの例であって
それはもうモルモットにも劣る陳腐な例であって
いちいち理由を言ってられないんです
だから先生には描いている絵の話しかしない
(絵に生きてますそれはもう健全に)
最後に
薬は減りませんか、と聞く
これが私の一番のいちばんの本心だと思って
かたくなに聞いている/問いただしている
ほんとうにこんなものでなおるとでもおもっているのですかあなたはいつだって
もう少し様子をみましょうという先生の言葉が
火曜の夜には少し息苦しい
二週間に一度
更に電車に揺られ
ヘッドフォンで耳を塞いでもうなんにも余計な物は聞かないように
もうなんにも覚えていられないように
川の上を走る線路/薄暗い駅前の公園/寄り道の出来ないちいさな後ろめたさ
両親はどうだったとしか最初に聞かない
私は出来る限り手短に答える
(またきょうもおかねをへらしましたわたしはいつだって)
でもおとうさん、
私はいつだって前を向こうとして30センチ先の足下を見ている
それも少しの進歩だと言って
いちいち増えていく錠剤を数え上げている今夜も
だからおとうさんおかあさんには元気だよと言う
薬をちゃんとちゃあんと飲んでいるよ私
ねえほんとうにわたしはびょうきなのですかそれはいつから
それはいつまで?
焦らなくていいからね
それは誰に向けての言葉だろう
(十九歳です。
二週間に一度、実家へ帰ります。
おかあさんは私とお風呂に入ります。
私はほんとうにほんとうに何か身体を調べられている監視されていると思って、
おかあさんの白い綺麗な肌を見る度に申し訳なくなる。
おかあさんとおとうさんの横で眠る夜は、
どうしてもさみしい。
どんなに私を愛していても。
かれらは私を置いて夢をみているから。 )
ほんとうにけんこうなひとをもってきてみせてください
わたしはほんとうにまいにちいきているのに 生きて いるのに
ほんとうにけんこうなけんぜんなひとをみせてくれたら
わたし、ちゃんとまねができるよ
せかいなんてただしくないから
ずっとくすりをのまなきゃいけないのは
せかいのほうだとしんじて る