竦みあがった鉄塔
KETIPA
からからに吹いた笛のさきに
荒地と耕地が立ちすくんでいる
とまれ ベドウィンが考えるのはただ
昨日牛を売らなくてもよかった という
後悔に似て非なる かん/そうでしかない
聞いたことのない音が混ざっている
彼らには音楽という概念が無い
はるか西欧ではそれは
ピアノソナタというのだがそれらの音楽は
蒸気を全て吹き飛ばす羽音
からすれば単なる/きょうざつおん/を越えていない
音楽という概念をもとう とする
という発想自体 が存在しない いらないんだよ
全く逆方向に進む
(太陽光に導かれているような)集団がいたが
彼ら:ベドウィンの目ではそれらの表情すら
それどころか動物か植物かすら もういない
それより連れている山羊の体調がよくない
こんなくすんだ地の中から
場違いにのびた鉄塔があった
上から突き刺さったようにも
下から突き上がってきたようにも みえる
とりわけ強く日光を浴び続けて
もう金属疲労なんてものではない
老朽という表現もまだ足りない
彼らの注意はただ
その銀光りする鉄塔の根元に
湧き出ている半透明な水にそそがれている
彼らがまきあげたしぶきをあびた
ので鉄塔は
乾ききった土壌のような細かい亀裂がはしった
縮みあがった鉄塔の振動音は太陽行きの集団にまで響き渡った
太陽集団はそれを音楽と勘違いした