竦みあがった鉄塔
KETIPA

からからに吹いた笛のさきに
荒地と耕地が立ちすくんでいる
とまれ ベドウィンが考えるのはただ
昨日牛を売らなくてもよかった という
後悔に似て非なる かん/そうでしかない

聞いたことのない音が混ざっている
彼らには音楽という概念が無い
はるか西欧ではそれは
ピアノソナタというのだがそれらの音楽は
蒸気を全て吹き飛ばす羽音
からすれば単なる/きょうざつおん/を越えていない
音楽という概念をもとう とする
という発想自体 が存在しない  いらないんだよ


全く逆方向に進む
(太陽光に導かれているような)集団がいたが
彼ら:ベドウィンの目ではそれらの表情すら
それどころか動物か植物かすら   もういない
それより連れている山羊の体調がよくない


こんなくすんだ地の中から
場違いにのびた鉄塔があった
上から突き刺さったようにも
下から突き上がってきたようにも みえる
とりわけ強く日光を浴び続けて
もう金属疲労なんてものではない
老朽という表現もまだ足りない

彼らの注意はただ
その銀光りする鉄塔の根元に
湧き出ている半透明な水にそそがれている
彼らがまきあげたしぶきをあびた
ので鉄塔は
乾ききった土壌のような細かい亀裂がはしった
縮みあがった鉄塔の振動音は太陽行きの集団にまで響き渡った



太陽集団はそれを音楽と勘違いした


自由詩 竦みあがった鉄塔 Copyright KETIPA 2009-09-12 22:22:08
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