「かくれんぼ」(妹)
月乃助

……なな〜つ、
   や〜っつ、
    ここの〜つ、とお〜
 
どこに隠れようとも
ひとたび
目をひらけば
あたしは 心のいやしい 鬼 
だ から
ようしゃは しない 
 
銀杏の陰/すべり台の下/痴漢に注意の看板 の向こう

たった ふたりだけの わらべ遊び

「みっけ」の声に、
妹は、きまって足に小石をけって 一度は残念な顔
すぐに 笑ってあたしに とびつく
おかしくて
勝って 少しばかりの偉い姉の手を のばし
妹の 頭をなでてやる
かくれんぼ

思い出にかくれた 妹は 美しいまま
遊びは、 
えんえん 終わらず
いつまでも はてまでも
妹がいなくなった 今も これからも 

庭の
青林檎 一番大きな実の 枝先にかくれても
ひさしの下の蜜をすう 蜂鳥になっていようと
繁茂する赤いコスモスの一輪だろうと
鬼の あたしはちゃっかり
妹を見つけてる

声をかけ
指に触れれば
少しも 笑顔は変わらぬ
少女の それ 
  
たぶんこんどは、 やっぱり好きだった
ななほしてんとう虫になって やってくるんでしょ 
そんなことまで 分かっているのは
不思議な話

きっと 
想いか 願い
この世に いつまでも 生きながらえる
つめたい鬼は ちからが あるのか
そんな こと


い のに 見つければ
きまって ひとすじ 流れ堕ちる

鬼のなみだ








自由詩 「かくれんぼ」(妹) Copyright 月乃助 2009-09-12 14:27:59
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