遠い鈴
木立 悟
光が花をまね
朝になる
一房一房が
波を追う
雨
丘を昇る霧
向かい合う手
結晶
くちびるの色を
手鏡に塗り
歯は透る雷
透る雷
引き出しのなかに
輝くことのないうたがあり
白と黒の水を湛えている
うすむらさきの砂が
何ものかの脳のように
荒地と荒地をつないでいる
はずんでいる
見えない傷に触れ
はずんでいる
枝の先に空は無く
ただ風と無がそのままに
ただそのままの径を描く
藍が溝につもり
黒よりも黒くなる
朝は低く
ささやきは遠い
三つの歩幅に重なる響き
誰もいないまぶしさの街
轍と轍のはざまを揺らす