遠い鈴
木立 悟






光が花をまね
朝になる
一房一房が
波を追う



丘を昇る霧
向かい合う手
結晶


くちびるの色を
手鏡に塗り
歯は透るらい
透るらい


引き出しのなかに
輝くことのないうたがあり
白と黒の水を湛えている


うすむらさきの砂が
何ものかの脳のように
荒地と荒地をつないでいる


はずんでいる
見えない傷に触れ
はずんでいる


枝の先に空は無く
ただ風と無がそのままに
ただそのままの径を描く


藍が溝につもり
黒よりも黒くなる
朝は低く
ささやきは遠い


三つの歩幅に重なる響き
誰もいないまぶしさの街
轍と轍のはざまを揺らす















自由詩 遠い鈴 Copyright 木立 悟 2009-09-11 22:33:14
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