まっさらなほどの欠如を
あぐり
おかあさんがわたしをうんだので
わたしはおねえちゃんをうんで
おねえちゃんがまっさらなわたしをうんだらいいな
単細胞生物みたいに生きられるわたしを
おねえちゃんにうんでほしいんだ
わたしはおねえちゃんを慎重にうむから
ちゃんとしたわたしをうんでくれるように(単細胞生物みたいに)
おねえちゃんのかかとからうまれたいの
少し固くなったかかとからかかとからかかとからかかとから
(グレーな目を見開いて/指をしなやかに動かしながら)
完全なる欠如を身体に欲しいよ
埋める穴なんていらないし
指摘するだけの杖もいらないし
なにもかもが平らな世界で
分裂だけを繰り返していられるのが
どうにも幸せなんだって
わたしは不完全な欠如を抱えて学んだりした
おかあさんがわたしをうんでくれて
ちゃんとそだててくれて
ちゃんといきられるようにあいせるように
そううんでくれて
でも
わたし
なんでかな
正しい不完全さが欲しくなるよ
わたしのあいなんて
とても複雑な役に立たない方程式みたいで
誰にも解けないことだけで成り立っている
おねえちゃん、
うんでほしいよわたしを
このままじゃ
正しくないの
単細胞生物みたいに
分裂だけを繰り返して
そのためだけにあいせるわたしを
うんでほしいの
おねえちゃん。