m u s i c a
李伍 翔
私は確かに
あの場所にいたんだ……。
耳が張り裂けそうなくらいの拍手と
目が眩みそうになる照明の中に。
ひとつの 音を
ひとつの 心を
繋いで
絡ませて
和に
倍に
ひとつ を 大きくさせてゆく
あの、不思議な空間に
私は
いたことがある。
そこで私は
うわべだけの繋がりを
認めたくないと
必死に なっていた……
彼女たちは
気づいていなかったみたいだけれど。
嗚呼、
至福の 時。
すれ違っても
この 音 は
ひとつ を大きくする
はぐるま。
独りでは 駄目 なんだ。
独り が いっぱい でなければ
駄目 なんだ……
どうして わかってくれない?
Aの音が ひとつ
また ひとつ
ひとつ
ひとつ
と
重なっていくの
ひとつ
ふたつ
と
繋がっていくの
みっつ
よっつと
絡まっていくの。
ずっと
ずっと
続いていくの
お願い
私は
ここ に いたんだよ。
置いていかないでよ。
私の
思い描く 世界を
否定しないでよ。
私の見た世界は
どこか
遠くの世界だと
彼女たちは言った。
嗚呼、
至福の 時。
私をここから
放つというのか。
大きな ひとつ から
放つというのか。
ひとつの 音を
ひとつの 心を
ほどいて
散らせて
わって
引いて
ひとつ を ひとつに
あの、空虚な空間に
私は
いる。
もう、
紡ぎ
出だすことのない
シ フ ク ノ オ ト 。
和に 倍に
輝きだす
あの感覚を
もう
私は
手にすることはできない。
誰もいない
劇場に ひとり。
一人。
独り。
暗闇に
のみこまれる………