降り注げ
あぐり
のうぜんかつらの涼しげな顔に
もっと朱を塗りたくりたい
あなただってもっと
生々しくなれるんじゃないの顔の無い恋人
愛してると愛してないの中間を掬い上げてぼくに降り注いでください
誰だって雨のなかで走り回って花に口付けたくなる瞬間が
ある
でしょう多分
わたしの傷口にあなたが唇をあてて
ああ
わたし
この為に今までを白蛇に預けてきたのね
(理性が言うよ
ちょっとオーバー
オーバードラマチック
どっちにしろODじゃないの)
のうぜんかつらみたいに生きていきたい
とは
全く思いもしなかった雨降るバス停
だって夜に映えない
だって上品
叫びたいぼくを
叫びたくないわたしが
掻き分けて掻き分けて
頭を出したのは一体どちらだ
声が出るならそれは
私
なのか
私なのか?
鏡に映る
アザミが見たい私は
にひゃくきゅうじゅうはちえんでいちどだけせいきょうにうられていた
アザミを
今でも探してしまう
あれは運命的な出会いでしかないのに私はまだ買う両手を持っていなかった
棘が怖かったんです
いくつもいくつも飽きずに咲き乱れるのうぜんかつら
アザミだってきっときっときっと
私はアザミのように生きていきたいのです
ただ
死んだことがないから今、そう言ってるだけですが
*
なんて色々書き綴る私の右手
中指には爪に付着した誇らしい赤色藍色
教壇前の眼鏡の先生は黒板に
シュルレアリスム→深層心理
と書いたままプリントを淡白に読み上げているから
だから私
こんなことつらつら思っているんだわと気付いてしまう六月下旬
花火、の光があなたに降り注いでください。
出来れば私の痛々しい熱を最大限に含ませて。
あなたに降り注いでください。
六月の終わりです。