優しいと言わない
靜ト

「どうしてそんなに優しいの?」

聞いたら、きみは
子どもみたいに首をかしげて

「優しいってこと、俺にはわからない
 ただきみにしてあげたいから、するだけ」


悪戯っぽく笑っていた(まっくろな、長いまつげの目)


そういえばきみは
優しいという言葉を使わない


「思いやり、優しさをもとう!」
「…に優しい…」
「あたし優しい人が好き」


きみの周りのあちこちに
ヤサシイはあふれているのに



きみは、一度も言ったことがない



でもあたしはしっている

やさしいなんて本当はないんだってこと



あたしにあたえられるすべてのあたたかさは
きみのまっすぐさで、こころで、果ては生きているということで



それをたった四文字で表すなんて
とうてい、できないのだ



きみは優しいといわない


あたしももう君を優しいといわない


ただきみがくれるもの全部を真摯にうけとめて、

ひとつもこぼすまい、と強く目を輝かせるだけ



自由詩 優しいと言わない Copyright 靜ト 2009-09-10 18:09:00
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