テイルとダッタ
キムラタツオ
『テイルとダッタの兄弟は森に逃げ出したが兄のダッタは嫉妬からテイルを殺し神様は何をしているダッタお前はまさか弟を殺しているのか?はい神様私は一人で夜だっ
彼は電車になっている
どうも姿が見えないと思っていた
たくさんの人を載せて
行ったり来たりしている
誰も彼には気付かない
彼はたった一つのお話しを囁いている
長過ぎて誰も一つのお話しだと気付かない
始まりも終りも無いので
それは今と同じ
彼もそんな男だった
聞こえないお話しをする
電車になると夜も走るので
たくさん虫を殺した
人の時に一生で殺した虫の数を
一晩で砕いた
自分がよだかならただ殺さずに命を食べられるのに
彼は少し悲しくなった
彼のお話しは少し変わってきた
人らしさが薄れると
なおのことお話しとは分からない
ある日彼は人を殺した
彼はもうほとんど電車だったので事故だった
事件には人柄がある
虫と違いはない
もう少しで事故でもなくなる
お話しは続いたが
始まりも終りもないお話しは
いつしか始まりでも終りでもあった
始まりも終りもある今は
だった になった
駅だった橋だった踏み切りだった家だった森だった海だった夜だった人だった虫だった事件だった事故だった始まりだった終りだった今だった悲しさだったよだかだった舌だった指だっただっただっただっただっただっただっただっただっただっただっただった
*
右目に だった が刺さって抜けずにいる
だった はずきずきと脈打ち街を
街だったにする
右手だったの親指だったで携帯だったに詩だったを
打ち込む朝だった
左目はまだ だった 程ではなく ている だった
電車が橋を渡っている
川が流れている
河川敷に緑が萌えている
のを見ている
右目だったを触った手だったで
左目で見ているにうつさないように
だっただけでは街はあまりに危険だった
このここ は
生成している劣化だった
生きている記憶だった
感情に囚われている理性だった
うまく行くのは料理と写真だけだ
机だったに置いているのは
うまく行かず大半をこぼす
ぶちまけられている食べ物だった
こう有っているのを悔やむのだった
*
左目までだったになれば
もう電車になるしかない
右目をハンダゴテでつぶした右目だっただった
つぶれ だった ている
街は ている に見えた
ストリート:ストーリー>テイル:ている
それ以来僕はお話しし続けている
太陽と月のツブシとツブサレの
そもそものお話しだ
*
そもそもの話しは
ている
に繋がっていく
あなたの ている にもそうだ
あなたの毎日乗っている電車のお話しを
聴き漏らさないで
たくさんの虫たち
たくさんの人たち
その電車はこの街では特に
羽化をする力で走って行く
羽化 つまり だった
ツブシてもツブシても
ツブサレてもツブサレても
だったは増え続けている
金色の羽で飛べ
ているが埋め尽され
ツブシが満ちて夜空に星を掻き消す前に
金色の羽で飛べ!
*
体の中のみづうみが溢れてしまう
僕はまた夜だ
神に咎められても
僕は一人で夜だった
テロメアの壊れただったは
複眼の一粒の だった が瞬くたびに
増えている
だったは僕のているを虐殺する
金色の羽の虫はツブサレている
ぶつかったのは
だったを囁く電車だった
*
……たのです』