ポカリスエット
夏嶋 真子
回転扉の向こうはサバンナだった。
「さぁ、はやく。」
何かに躊躇っているうちに
電解質と一緒に失われた
青という名の雷鳴。
「サバンナに広がるベッドには、
羽が生えていて飛ぶの?」
まことしやかに囁かれる
終わらない渇望。
鳴りやまぬ喇叭のSo Far.
空の湖を泳ぐカヌーで
草原を這う飛行機で、君と混じりあい
かつて青と呼ばれたものは
500CCの半濁した液体の中で、
新しい朝を芽吹かせる。
電波時計の時刻は
狂いようもなく
狂おしいまでの
午前5時55分55秒、
フォルテシモが心臓を殴打する。
ベッドサイドに放置された
生ぬるいポカリスエットに
君のいとおしい体温は
まだ溶けきれず、
青い鬣を靡かせ、サバンナを彷徨う。