ひとでしか癒されない
吉岡ペペロ
目には目を、歯には歯を、
このハンムラビ法典の言葉は
復讐法だとか拡大報復の戒めだとか
そんなふうに言われてはいるけれど
この言葉の連なりに
私はひとの悲しみを感じるのだ
なんとなく履修した心理学で
アル中の父親と暮らした娘は、アル中の男と結婚することが多い、
そんなテーマの授業があった
アル中の父親に覚えた欠乏感は、アル中の男に愛されることでしか癒されない、
そんな結論だった
暇つぶしのような営みのなかで
ペットの死は
あたらしいペットを飼うことでしか癒されない
仕事での失意や蹉跌は
仕事で取り戻すことでしか癒されない
だからひとのことは
ひとでしか癒されないのだ
目には目を、歯には歯を、
この言葉の連なりに
私はひとの悲しみを感じるのだ