ビニール傘
しべ

重たく静かな黒松の壁
その右隣
荒れた土地には白い蔵がひとつ
町はだいぶ朽ちたが
彼はしぶとい

ビードロはヤニの味がするだろう
シャワーのような換気扇の音は
たとえばトラックや軽自動車よりもきれいだった
割と変な音だった

漆喰には鋏で切ったような魚色の影が跳んで跳ねて
その下には座布団が蟹のような格好で眠ってて

テーブルの木目に沿って映り込む蛇の雲は
かなりラフなスケッチみたいだ
すぐに見る雨の景色みたいだ

車に戻るまでの傘は一本
たまに淋しい色をしている



自由詩 ビニール傘 Copyright しべ 2009-09-08 16:14:51
notebook Home 戻る