花の通天
捨て彦

新世界の入り口の門は
歌舞伎町にも負けんくらいの
色とりどりの電球で埋め尽くされとって
作りもんの花やら枝やら
そりゃもう
朝でも夜でもぎんぎらぎんぎら
通天近づくに連れてだんだん
賑やかな人の声が聞こえてきよる



うおおーい うおおーい
街に入れば
そこは幽玄な街並み
ほやけど道端は
芋洗ろたみたいな人の群れ群れ群れ
どんぶりひっくり返したような雑踏と熱気で
おれはほんまにめまい起こしそう
こっち見たらバナナの叩き売りしてる
向こうでは蝦蟇の油の実演や
お前ら騙されたらあかんぞー
大声で叫んでも
野次馬のべしゃりですぐにかき消されてまう



腹減ったから串かつ屋探す
人にぶつかったから
すんまへんてあやまったら、あかん
でっかいたちんぼのオカマや
うわ、オカマや
うるさいわいガキ、さっさと向こう行きっ
やいやいやいやいゆうてると、あぁ、花吹雪
空から落ちてくる花吹雪は
二階にある遊郭の花魁のしわざ
木の窓格子にもたれかかって
道行く人に笑いながら
花吹雪を空へ散らしてる
見惚れてるおれの頭の上
でっかいピーカンの青空に点々と
極彩色



酒を昼間から空けるのがここでは普通
ええ具合に酔うてたら
道で寝とる阿呆に足引っかけてこける
あーおもろいなぁ
なんや知らんおっさん同士が
肩叩き合いながら正座して泣いてたり
電柱に一生懸命
怒鳴っとるおっさんとか
あーおもろいなぁ
この道ずっと下って
新世界とジャンジャン抜けても
そこら中
千鳥の足取りばっか
おれもほんまにええ具合で
いわゆる通天総人口
阿呆ばっか
今やったらそんなもん
おっそろい女衒もやくざも
関係あらへんで





自由詩 花の通天 Copyright 捨て彦 2009-09-05 05:53:15
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