自戒
伊那 果

 私はたくさんのものに恵まれている
 収入は同年代の女性の3倍
 たまたま入った会社でも使えると思われている
 恋愛には事欠かず
 一生大切にする左手のリングも手に入れた。

 そういう女の物語は
 面白くもおかしくもなんともなくて
 さぞかし幸せそうに見えるでしょう

 で、その女は
 夜中にワインをあけながら
 インターネットに向かって
 詩、のふりをしたぼやきを打っている


  誰も答えない誰も答えない誰も答えない

このワインは、値段は忘れたけれど、安かった割りに、香り高いです。
いうほどワインがわかるわけでもないのに、一番安いワインは選ばなくなり
でも結局スーパーで、値引きされたものを買っている
そういうことです。
で、結局千円もしない安いワイン。でも一番安いわけではない。
それが私で
私は何も変わっていない
つまり
楽しむのがとことん下手な女なのです
幸せなときや 楽な時は なんだか不安になって
がんばれ 耐えろ そんなことを自分に言い聞かせている

   私が一番幸せを感じるときというのは、間違いなく
   あなたの隣で眠るときです
   だからすべてを捨てて
   仕事なんてものは 結局名誉欲なのだから
   高いワインより あなたとのむ安ワインがおいしいのだから
   だからいけばよいのです
   あなたの住む町へ
   あなたの隣へ
   私がここで笑顔でいられるのは
   すべて
   あなたのおかげです。


 そういう決断ができないからこそ
 20年先の未来に保険をかけて
 私は人もうらやむ経歴を手に入れた。
 そうしてみると



 捨てるのが難しい。
 捨てられないのが苦しい。

 わかっているのです、そのすべては結局
 人の評価にしかなりたっていないから
 だから私は苦しくて

 そこも私は変わっていない

 
 酔っ払いながら考えることは同じ
 三つ子の魂百まで、というなら


 私はどこへ向かう?


自由詩 自戒 Copyright 伊那 果 2009-09-05 00:49:49
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