ノスタルジーの沈黙
ブライアン

夜、電灯は道を照らすが、未知を照らしはしない。
50m間隔の、それ以上の、疎らな電灯の列。
虫の群れは光に屯する。

男は虫だ、と怒鳴った。
それは、誰かに対する抗議だったのか。
静聴する従順な周囲は、男に対する黙秘で答える。
男は無視されたのだ。
みることときくこととは違う。
空間に線形を描く男の声は
聴かれることによって、振り出しに戻る。意味を失う。
いまや、男が出生した土地は、未知の土地だった。
視覚が形成する遠近法を通過し続ける夜。
黙秘に耐えうるためには、大量のエンジン音が必要なのだ。
ただ、エンジン音は遠く離れている。
道を照らす電灯よりもはるかに。
北緯38度線直下、政治的声明の領域を行ったり来たりする、
国道113号線の疎らなトラック野郎たちにそれらを願うしかない。

男に懐古は許されない。
街では指先一本、リストラを指示するだけの力があるというのに!


自由詩 ノスタルジーの沈黙 Copyright ブライアン 2009-09-04 22:26:18
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