ドラえもんの誕生日
伊那 果
きょうはドラえもんの誕生日だったの
あなた知ってた?
そういいながら彼女は無造作にブラジャーを脱ぎ捨て
胸元にはプラチナのネックレスが残された
そうかドラえもんは西暦でいうと何年に生まれたのかな
男はソファの上で寝転んだまま本から目を離さない
そういえばそれは知らなかった
あたしたちの孫の孫なら
ドラえもんの誕生に出会えるかな
彼女はそういってユニクロのTシャツをまとう
そうね まあそんなものがいればの話だけど
男は本から目を離さない
いつものせりふ
変わらない声
あ、あたしたちはもう終わりだ
となぜか彼女は思う
きょうはドラえもんの誕生日
だから別れの手紙を書こう
寂しくて離れられないはずの手を
思い切り飛び出そう
きょうはドラえもんの誕生日
夢を見れば何かが変わるんだ
そんなことを思うための、ドラえもんの誕生日