ドラえもんの誕生日
伊那 果

 きょうはドラえもんの誕生日だったの
 あなた知ってた?
 そういいながら彼女は無造作にブラジャーを脱ぎ捨て
 胸元にはプラチナのネックレスが残された
 
 そうかドラえもんは西暦でいうと何年に生まれたのかな
 男はソファの上で寝転んだまま本から目を離さない

 そういえばそれは知らなかった
 あたしたちの孫の孫なら
 ドラえもんの誕生に出会えるかな
 彼女はそういってユニクロのTシャツをまとう

 そうね まあそんなものがいればの話だけど
 男は本から目を離さない
 いつものせりふ
 変わらない声

 あ、あたしたちはもう終わりだ
 となぜか彼女は思う

 きょうはドラえもんの誕生日
 だから別れの手紙を書こう
 寂しくて離れられないはずの手を
 思い切り飛び出そう
 きょうはドラえもんの誕生日
 夢を見れば何かが変わるんだ
 そんなことを思うための、ドラえもんの誕生日


自由詩 ドラえもんの誕生日 Copyright 伊那 果 2009-09-04 00:00:22
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