まつげ
ゆるこ
目が覚める瞬間の耽美、すなわちそれは曖昧な伏線を凝縮した線路図のようなもの
一連の流れは稚児の指先が母親の元に辿り着く前に行われ、
そのことによって絡めとられた誰かの睫毛は
昨日へ帰るように促し、私は眠る
*
サボテンの花がまたおおきくなったね
おばあちゃんは笑いながら水をやっている
枯れ果ててどうしようもなくなったヘチマの植木鉢に
延々と、水を食べさせている
*
昨日帰ったはずの睫毛は今日も、目覚める瞬間の耽美を引き連れて、私を訪ねる
もう、うんざりなんだよと言えば、睫毛のくせにボロボロ泣く
どうしろっていうんだよと言えば、誰かの目もとへと走り出した
私には到底理解できないことが山のようにあるらしい
*
おばあちゃん、今日は外に出れないから、サボテンに水をあげるの忘れないでね
そういって、すべてを忘れていくドアをゆっくり閉じた
私はジョウロを持てない
おばあちゃんじゃないと、持てない
*
致死量の言葉を箱詰めにして、睫毛の元へ送った
きっと着払いにしてもあいつは受け取るだろう
そういうやつなのだ、私
あれ、感情がおかしい、おかしい
*
おばあちゃん、まっしろだね
さむいね
わたしもさむいよ
ものすごく
*
今朝はすこしだけ寒かった
ぽう、ぽう、と 風が鳴いていて
私はいろいろなことを少しだけ思い出して、眠った
明日は、睫毛は、そこまで来ている、来ているんだ