先端少女と沼と世界の裏側
ゆりあ
みんな多分物事の先端がすきなんだ
ほら
叡智の先端
流行の先端
あの娘のポニーテールの生え際
サヤカの黒くて真っ直ぐな髪の毛先
きみのかわいい指先
ツンと尖った白い生意気な鼻先も僕は慕うよ
先端
先端
ナイフのような鋭い意地悪の先端
アリスの先端
アレックスの先端
「山田クン、それはeroticismだよ、昨日川島センセイが言ってたやつだよ」
「ウン。大塚サンはeroticismに満ち溢れています、みたいに使うの?」
あの娘は間違いなく世界の先端
自分の一番脆い部分を研いで空を切る
そうすればほら
邪魔がいない新しい世界
目の前が明るく澄んでいる
なんて美しい
あ た し た ち が 世 界 の 先 端
「常に先端に住む少女たちは無敵だか先端ゆえにとても細く攻撃されやすい。だから少女たちは永遠に走ってなければならないのだ。止まったら横から攻撃される。走っていれば敵はそのスピードによる摩擦で傷つく。怪我をする。より鋭く強い先端の少女は世界を切り裂き続けていつか宇宙へと滑走するだろう。しかしそれは死をも意味する。先端少女は死と隣り合わせなのだ。それをみんな、知らない。先端少女は本当は今すぐにでも泣き出したい逃げたい死にたいと言うことを。」
その頃灰色の沼のなかにいた村田クンは必死に足を動かしていたがもう体力も限界に近づいていた。地上で生活していた頃の記憶はもうほとんど意味をなさなかった。ただ、高橋サンが死んでしまったこと、それだけは心に刻み込まれて頭から消えない記憶となった。その事実を地上から村田クンのところに伝えた白いフクロウは村田クンにそれだけ言うとさっさと地上に飛んで行ってしまった。村田クンは仕方ないのでフクロウに言われた通りに目的の城に向かって永遠に抜け出すことのできない沼を体力を少しずつ消耗させながら歩いていった。歩いた。
これは本当にあった出来事
もしくは地球の裏側の話