マイク事件 ーはっとりんの反省文ー 
服部 剛

(その悲劇は約ひと月前・・・
 マイクの電地を交換しようと思い 
 なぜかマイクの頭をこじ開けた時、
 配線をぶっちぎった事から始まったのであ〜る) 


お年寄りのゲームの司会で 
お爺さんが駄洒落を言うので 
座布団一枚・・・!のかわりにふざけて 
マイクを一本・・・!と手渡したのです 

そしてマイクを渡したまんま 
お爺さんは鞄に入れて持ち帰り 
お年寄りの皆さんの帰った後の 
老人ホームの部屋には 
「マイクがない・・・!」と 
職員みんなで右往左往したのです 

やがて電話のベルが鳴り 
受話器を取るとお爺さんの奥様が 
すまなそうに(ありましたわ)
と言うのを聞いて僕は 
ほっとしながらへなへなとずっこけた 


「ハットリ君・・・!!!」 
顔をあげれば、主任のおばちゃん大噴火 
(瞳には、炎がめらめら、燃えていた・・・) 
僕はただちにしゃきっとなって 
ぺこりぺこりと、頭を下げた 


  *


とっぷり日も暮れた 
夜の駐車場で 
まっくらな車に入り 
運転席でひと時 
凹んだ姿勢であくびを、ひとつ。 

今の職場で10年過ぎたわたくしに 
両目の炎をめらめら燃やし 
(あんたがしっかりせんとあかんのよ!)と 
噴火してくれるひともそういない・・・ 

老人ホームの出口から 
少しうつむいた足取りで 
スクーターにまたがった、主任のおばちゃん 
門の外へ、出ていった 

しーんとした運転席の僕は
誰にも聞こえぬ声でしんみりと 
(ありがとう・・・)を呟いて 
駐車場の暗がりにライトを灯し 
車のキーをくいっと廻した 








自由詩 マイク事件 ーはっとりんの反省文ー  Copyright 服部 剛 2009-09-03 00:58:01
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