砂糖人形
月乃助


はいりなよ
いっしょにかえろう 

ずっと制服に閉じ込めた
光るボタンは、すなおになって
想いを告げる
雨の放課後

目をかわしたら きっと
また、何もいえなくなるから
少し見上げて
校舎のひさしを 見つめた
雨宿り

綿菓子の積雲に 陽がさす
すぼまった空から 
砂糖色の雨がふる
天気雨って きまって いつも
ふざけたように 
まばゆいもの

ポニー・テールの肩に落ちる
下駄箱の横にたたずむ 
きみがひとりで いる
なんてチャンス

逃げていた心を捕まえた 午後
どんな ところにいたって 
どんな ときだって
なみだがでるくらい
好きなのに

砂糖菓子のような
白い世界を見つめる
きみは、雨がやむのを待っている
それだけなのに

えいって
さしだし かたむけた傘
分かってる 声をかけたら
もう、あともどりできない ってこと 

前ぶれのない、
きみの驚いた顔が おかしくて
僕はだまってた けど
もう ぜったい下を見ない 

いっしょに いこう
背だけのきみを いつまでも 見ているのは
いやになったんだ 
楽しいにきまってる
二人で あるいて話そう
想いでを つくれるくらい

僕からの 
少しつかれた紺色傘は、八角形の招待状
折りたたんでた心から 届くと
いいなぁ 優しいきみのハートまで
そうしたら あたたかな
銀灰色の雨のなか 砂糖人形みたいに
あまく歩く きみと僕って
幸せなはず だから

おねがい

見つめてないで
うなずいて よ


自由詩 砂糖人形 Copyright 月乃助 2009-09-02 13:59:20
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