「鱗光」
月乃助
月夜―――――――
はてしない白濁の光海は 東のはてよりのび
波音とともに 広がりやってくる
足裏に 触れる
コンクリートの
白を重ねた石英の ざらめく
陸の消え去った 突き出る瓦礫の遺跡の群れに
静かな肩より 夜をぬぎすて
波がしらのうたう 月明かりに
けもののように
白い脚でたたずむ
水面に突き出るビルの
割れた警告灯の赤い影
とめどなく やまず よせる
波打ち際の その先から 冷たく/ぬるく
鰭をちぎったような 足指でふれてみる海
肌の 一片 一片と
鱗に変わっていった 第五間氷期の始まり
抜け出そうと 生き残れと
淘汰に身をまかせ
あらゆる 生き物達が海へ回帰していった
魚族のあたしが、ずっと昔
人間であった そんな幻想がもたらした
一つの 海原風景