下弦を
こしごえ

雨上り
放たれた窓の
視界をよこ切っていく
一羽の乱反射する影を
かおる
私の亡霊

いつか見た棚引いたあの、風は
帰ることの出来ない
光にゆれていた
有形の門をたたき

さんさんとふりそそぐ
かくされた白いゆび先に
初秋の空
あざやかで一途な、
花の最期
あのひとも
このようであった
目をつぶれば

うしなわれた風に吹かれてから
幾夜 幾世、
うたわれてきたか
私の影を 連れ去ったまま
なにかと出あいみつめあうのだろう

いずれ、その 時が訪れる
姿なき 心音をはらんだ水

ぽつり ぽつ、といつになく
あたり はじめて
しん とそよぐ黒髪のまなざし
みちるそしてあふれ
雲のむこうに
月がかける







自由詩 下弦を Copyright こしごえ 2009-09-01 05:08:45
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