狭い話
吉岡ペペロ

ことしベトナムにいったときに

この穴にベトコンが隠れていたんだ、

という穴にははいらなかった

はいらなくて正解だった

狭い所が年々苦手になってきているようだからだ

きょうドックでMRIを受けた

過去にもしたことがあるはずなのに

閉所に対する苦手意識が高まっていた

はじまって30秒もたたないうちに

ナースコールを押してしまいたくなった

体がマシンのなかにはいってゆくたび

血がさっとひいて

全身は心臓になってひくついた

もう祈るしか手だてがなかった

耳栓のむこうから小さく

おつかれさまでした、と音がした

なんとか我慢できたのだ

マシンのなかではひたすら祈っていた

この閉所の恐怖に耐えさせてください、
耐えさせて頂いたあかつきには、
この真剣な祈りを、
これから起こりうる艱難辛苦に、
静かに真摯に向けてまいります、

その祈りから

すこしでもはずれると

閉所の恐怖にひくついた


自由詩 狭い話 Copyright 吉岡ペペロ 2009-08-31 20:08:48
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