希望のフォーナ、絶望のフローラ
瀬崎 虎彦
群青色の空の下であなたは自転車を押していく
わたしの歩幅を気にしながらゆっくりと歩いてくれる
オリオン座の見えるころに出会ったのに
まだ一度も喧嘩らしい喧嘩をしたことがない
わたしがとても傷ついている時に出会ったら
あなたのやさしさに気がついただろうか
言葉少なに慰めるやさしさがあるとして
きっとそれは看過していたかもしれない
でももう出逢ってしまったのだからこっちのもの
あなたはわたしと出逢ったことを他の誰とも
とりかえられはしないのだから
そしてわたしはあなたが教えてくれた星の名を
幾つかは覚えて自分で見つけられるようになった
あなたを誰にもとられたくないものだから