鋸でぎこぎこ切っているのだ
人 さわこ
tasu助けてくださいと言った。声を振り絞ると聞こえるのは絶え間なく揺らぐ記憶の中で何かを誘導しようとしている集団、その中心人物に手錠をし私たちはつかの間の眠りにつく。感情が感情を呼び起こし、極々瞬間的なレンタルサービスを成立させる。忘れたはずの甘い運命にまだ歩くことも覚束なかった私は目を閉じ、真剣にその声から意味を掬う。独りきり、ただの独りである事実を決して頭の隅に追いやっていたわけではない。前へと進む努力を馬鹿にしたわけでもない。あなたが髪飾りを耳元で輝かすその一瞬に見惚れてしまっただけだ。百あるというその仮面を一枚一枚私に被せてください、今までの愚かな言葉を許してほしい。閉じたはずの蓋を私は何度も確かめる。科学の力でさえ私の灯火を消すことができないのなら、もう私に罪を犯せるのはあなた以外存在しない。歪んだ精神を壊してほしい、その長い指で縛りつけて気が遠くなる程の優しさを教えてください。あなたに出来ることはただそれだけ、あなたに出来ることを私だけに惜しみなく与えてください。コウモリは墜落する私だけを追う。そういう習性を持つと幼い頃に聞いた覚えがある。それなら、互いに向き合った顔面に対し、私がその片方であるとすればその向こうにある顔面はあなたのものでなければいけない。それは私だけが決めたことではなく、あなたもきっと辿り着く結論である。しっかりと命を消してください、それ以外方法が見当たらないのです。それ以外の方法を知らないから、私の為に証明してください。しっかりと大地を踏みしめるには、足が二本では足りないのです。焦げた足の裏を悲しいとは思わない、昔の約束を守れる人はいない。死をもって償える罪はない。立ち止まらずに歩くという不可能を、咎める馬鹿は居ない。宝の地図を目の前に、居眠りをするシナリオはつまらない。誰かが背を押す。歩くことが出来ない。ただ見ていただけの素晴らしい絵を私は今も鮮明に描いている。言葉が言葉を持ち、脳を超え山を越え今生きている存在を蔑ろにしてしまう。冷蔵庫の余りもの。例えば長い間木を育て、それに満足した男が山を降りるとき。男の目の前を巨大な濁流が襲う。男は飲み込まれ呼吸が吸引に変わる。果てしなく水を吸い込み吐き出す、明日もまた水を吸い込み吐き出す、その次の日も水を吸い込み、吐き出す。決して死ぬことができない。男が生きようと思う限り、死ぬことができない。そうなれば次の日も男は水を吸い込み、吐き出すだろう。明日も明後日もどうせ吸い込み吐き出し、それが永遠に続くことを分かっていても、男は水を吸い込み、吐き出すことを止めない。何故そこまでして生きようとするのかと、誰もが男に問いかける。その瞬間、男は永遠の眠りにつく。風邪の人に問いかけてよ、独りじゃないんだって、だってだって忘れないで。テレビのボリュームを最大にしてももう聞こえない。冷蔵庫の余りもの。演技は力を持つ、その栄養分の量は人体をパンクさせてしまう程多量である。なので女優なんてものは存在しない。デザイナーの卵が言った、着脱を繰り返すと大人になれますか。デザイナーが言った、あなたを守ってあげる。もう何も心配しなくていい。卵は翌朝孵り、雀となった。大空を飛ぶことを比較的小規模な範囲内で許されたのである。デザイナーは翌朝、それを見送った。デザイナーは自分が人の子である事を恨み、大空へ羽ばたいて行った。やれば出来るじゃないか。誰かが呟いた。やれば出来るんだね。誰かが呟いた。そして終わる事のない平和を願った。愛してるはもう聞こえない。徒歩の限界というのは人の限界である。電車で出かけたとして、線路が途切れるところが電車の限界だとすると。徒歩というものに限界は無いように思う。歩けるまでが限界だ。でも、歩き続けることに気を失ってしまう。よく考えてほしい、お金のことをよく考えてほしい。私のこと、愛してほしい。来週はツマーチルのことをお教えします。来週が来たらの話だけど。冷蔵庫を作るときにあまった部品という意味ではなく、冷蔵庫の余りもの。今日からお前はタニシとして生きていくのよ、いいわね。はい・もちろんの2択しかない。もちろんを選んだけど、いいえと思って選んだから、いいえを選んだことにはならないのですか。何が死にますか。何は死にますか。何は死にますか。山が死にますか。川は死にますか。何は死にますか。何をどうしたらそういうことが出来るのかわからない。親は子供のためならマヨネーズを職業にできるのよ。マヨネーズを職業には出来ないけど、お前のためなら何だってするよという前置き。口の中で肉じゃがをつくると、どうなるか知ってるかね触れたら切れそうな顔しやがって。早に雨、扉を決して開けてはいけません。どこへ続いているか知れたものではないから。その木箱、決して開けてはいけません。何が入っているかわかったもんじゃないから。遠のいていく潰れたさかなへんでもうすぐ揉みこむ、人人人人三回手のひらになぞってモミコム。近づいてく、近づいてく、オクタヴィスナレウゥウ。大丈夫って言われても、全然大丈夫じゃないからな。もう右腕無いからな。山羊のミルクで育った少女は、17になった瞬間視力を失ったという。ちょうど、バースデーケーキのろうそくを吹き消したあと、部屋の明かりをつけたのにも拘わらず、少女は消して見つかることが無いろうそくの明かりを闇の中で求め続けた。びっくりさせたら直るかもしれない、と思い大人たちは少女を何度も驚かすが、少女の目が直ることはなく。消して驚かない盲目の少女がいる、とその村は有名になった。なんで拾ったのって言われたところで、何かに使えるかもしれないと思ったからとしか答えられない。スイミーは黒いから目になりました。枕を食べたことがない、枕を食べたことがある、の比率が大体同じということから五分五分という言葉が出来たとしたら、そんな気軽に五分五分って言えそうにないし、壊れる程愛しても3分の1も伝わらない。愛してる聞こえない。樹海にはお菓子の家。愛してる聞こえない。もう歩けないよ。羊かと思った。羊ではないという情報しかない。顔に蒟蒻ついてるよ。愛してるはもう聞こえない。好きな人ができました、恋しちゃったんだ、愛してると言うことも、会いたいと言うことも、死ねと言うことも、自己紹介をすることも全て同じで、とても難しい。今夜星が降りてきたら、月に豚を刻んで胸にしまおう。それは瞬く間に消滅して私の小ささを際立てるだろうけど、それでもまた夜になって、星が降りてきたら、私は月に豚を刻んで胸にしまおう。難しいことじゃない。生まれたし生きる生まれたし。そして大草原を泳ぐよ。小石で足が痛んでも、世界が終わっても、あなたが居なくなっても、今日が過去になっても、音楽が滅んでも、私というものが、消えて無くなっても、今夜星が降りたら、月に豚を刻んで胸にしまおう。真実はいつもひとつ。真実と嘘はいつも瓜二つ。本当のことを知りたくて、私たちは耳を澄ます。ざわめきに思いを馳せて、また必要の無い過去が増えて行く。絶望に未来を奪われて、失くし物は二度と蘇らない。言葉を持って歩いていく。立ち止まって何かを捨てる。どこかの螺子を緩ませたまま、求めたものを垂らしながら笑う。そして、いつもようやく気づく。眠って、触れるとき、切れるように思える表面であるならそれになる方法を知っています。またはどちらの雨も決して開かないでください。早いことドア。それがどこで導くかを知らないようにできたので。それを決して開かないでください。果物かご。あるので。瓶の中で私は目覚めた、酷く息苦しい。この世の果てに立ち、今何を思う。数えているのは指の数で、それが多いのか足りないのかも、もはやわからない。この先を行こうとしても、もう道がない。ため息をつき、振り返ると私がいた。嗚呼、私はこれ程の道を歩いてきたのか。辿り着くというのは、真にこのことだった。でも、ほんの一瞬で全ての道を振り返ることができた。前を行くこともない、振り返ることも、もう出来ない。空は同じ色で私を見下ろしている。理解それをマッサージしません。あなたであるもの神秘はすぐそれが掌にあった地下鉄でそれにアプローチして、ひっくり返して、入る人々人の3倍のひっくり返ること。そしてアプローチ。ひっくり返ること。アプローチしてください。金庫、全く前述のアームノーがそうであるか、既に。傷つけたくなかったよ、本当は幻だった。詰まる胸の鍵をくれた、あなたは泣いてるの。髪をとき、問いかけてよ、独りで生き抜いてごまかしてよ。一瞬一瞬を無下に、蟹股で過ごしていたら良いことありますか。前を向いてればまた会えますか。また手紙を書きます。たまには会いにきてよね。この坂越えたら、待っていてよね。手を振っていてよね、見えなくならないでね。私の中で行き続けていてよね。流離のベイビーフェイスにぞっこん。私はもうただの肉の塊でしかなく、聞こえるのはわが子の泣き声。何を泣いてるの、私は怒ってなどいないのに、心配でずっと見下ろしていた。子は私に別れを告げ、時間が秒針と同じ速度で経過する。大人になった我が子を見て、私は始めて息を吐く。この世界に温度はない。でも、吐く息は澄んだように白く、美しい。半音上がる。曲がりくねった魚をさばいたら、お菓子を組み立てたら家になった。公な場所で性交接をしてはいけない。年が明けて、かるたをしている所に引越しの業者が来て、我々も参加させてくださいとせがまれる。しかたがないのでかるたをして、最終的にトランプを発明する。本来牛が食わないものを食わすからこんな事になるんだ。返す言葉もないという顔をしました。愛してる聞こえない。冷蔵庫を山ほど所持している紳士が、ひょんな事で沢山の知人にひとつずつ分け与えるが、そもそもその紳士にはあまり知り合いがいないという意味ではなく、冷蔵庫の余りもの。遺書、私が突然死んでしまったらどうしよう。子供のまま車窓の景色が通り過ぎていく。何一つ学ばないで、誰一人思わないで、私は海底を流れる。草の味を知り、あぶくを吐く。遠くなれば遠くなるほどに何も見えなくなるから、出来るだけ近づこうとする。でも遠くはずっと遠いままで、ずっと近づこうとしている。あなたはないてるの。今どこにいて何を食べているの。あなたはないてるの。変わり始めることを恐れずに死んでほしい。必ず刺すチョキからその目を離さないで。あくる日、つかの間の休息が与えられた。寝る前に殺さないでください。私を寝る前に殺さないでください。抱きしめて、二度と離さないでください。ようやく幕を開けた物語を、私はとても愛しく思う。きっと、社会科や動物の偏見を横切る衝動的な貨物列車に乗り遅れ、脳内で膨らませた昨日よりもっと素晴らしい明日が私を待っている。殺されたくない。死にたくない。誰が教えたわけでもないのに、目が濁っているのを知っている。研ぎ澄まされた太刀魚の美味さよ。川を跨いだ向こう側に何がある。そこから何が見える。世界中の誰もが非現実的な生に飲み込まれ、私だけが生き延びる世界に、子犬をつれて。ずっと見ていた夢が現実になり、悲しすぎて歩けない。でもゆっくりと、着実に進んでいる。何を見よう、何を感じよう、何をしよう、何をつくろう。YESもNOも、私には似合わない。何も要らない、何もないない。どこまでもあなたと共に行こう。あなたの望むまま、私のままで。数少ない心残りを大切に、私にはあなたがいる。あなたが洗う食器のすべてを私に拭わせてほしい。心がどこかへ移動して、もしも、それが異空間で謎の巨大な手のひらに握りつぶされても、無い心が描くのは私とあなたの繋がった手と手であり、私の肌のぬくもりを、いつまでも覚えていてください。千年後、大雑把に分けると私はあなたになっている。私があなたになるときまで、どうか生きていたい。眠る前に殺さないでください、まぶたを擦る音で子供が目を覚まし、一晩中泣き続けても、私が眠るまで殺さないでください。目を閉じて、月に豚を刻んで胸にしまおう。私に、愛したすべてに、私の中の小さく儚い願いに、この手が繋いだ全ての感情たちに、I LOVE YOUを掲げて。誇らしく、ただ愛することを求め、まっすぐで強いあなたに、月に豚を刻んで捧げよう。馬鹿みたいに繰り返して、馬鹿になって、中に入って、墓を建てて、直に触って、いかにして動かすのかは知らないけれど。こぼれたきらきらをあげよう。手招きのその先へ、担いだ神輿に乗せてよ。祈りが届くといい。何もわからないし、何も見えないけど冷蔵庫の余りもの。つま先から体の芯を伝わった、どうしようもなく馬鹿げたこの声を許してほしい。光る石を頼りに森を抜けたらあなたは踊り、私は歌おう。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。好きだ。傘を家に忘れてきた、もう雨は降らない。