蟻と森の微妙なスタンス
草野大悟
手のり森ちゃん
そう言って
蟻が両手を空に向けてそろえると
森は
いつも
にこっと笑って
ちょこんと座ってきた
森は
蟻の両掌にすっぽり納まる
いとおしいこころをしており
そのすっぽり加減の奇跡を
そのころ
森も蟻も
まったく気付いてはいなかった
のだけれど
掌の森のこころは
ふわふわふわふわ
とても柔らかく
心地よく
ふたりをひとつにするに十分な光を放って
いつでもその先に
太陽があったのだけれど
ある日
森が
突然
太陽を輝くことを断ち切られ
手のり森ちゃんの
ちょこんと座りもできなくなったんだ
蟻は
森の
すべてが
宇宙に通じていることを確信しているけれど
宇宙は
森の
切り刻まれた惨状には
ほとんど無関心の風を装っている今日
ぷにょぷにょの腹に∞を巻いて
銀河にタイマン張っている