「亡失」(なくしもの)
月乃助
夏の 目の高さに芝があって
そこに 白爪草が 咲いていたって
むすめが おぼつかなく 歩きはじめたって
あたしが それを わらって見ていたって
あたしは やっぱり
なくしてる
暮らしのために けずられたり
人のわらいが おもすぎたり
できやしないって あきらめたり
いやだって なげだしたり
青天が 目の前に差し出され
みまがう海が ひっくり返って輝いて
新しい帽子の ひさしを かんで
問いかける波に
ことばを かえせた 夏
あのときは たしかに
しっかり 手にしてたはず
まだまだ
のこってるって
そうおもってた
あたしは、
あたしにとどまらずに
それでいて、気づかず
ちからが にぶり
ずっと いつも すぐに
ひどい いきおいで
なくしてる