不器用風に吹かれて
中原 那由多

健気に鳴き続ける蟋蟀に嫉妬した夜は
何も思い浮かべることが出来なくて
言い訳の代わりに意地っ張りな顔をしてみる
涙を落とす理由がどこにも見つからない


時々、弱くありたいと考えてしまう
強がることの美学にうんざりして
不本意な行動に走っては
そうじゃないんだと落胆する
それから止めどない妄想に閉じ籠る
それなりの幸せがあり、特別な不自由などはなかった


いつの日だったか
私は本当に好きなものだけを部屋に飾りたいと言った

友人は
   「それが一番だと思うよ、俺は妥協しちまったけどな」
                            と答えた

彼は賛成ではなく謙遜しているんだろうなと考えた時には
ついに信用の仕方を忘れてしまっていた


隠し事はしていない
あたかもそんな風に疑われてしまうのは
生まれつきだから向き合うしかない
夜のしじまに嘆くのは
ただ自分らしいと信じているからなのだろう


自由詩 不器用風に吹かれて Copyright 中原 那由多 2009-08-30 11:54:00
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悠希子