さざなみ
千波 一也
さざなみは
優しい顔して
ぼくらをつかまえる
数え足りるくらいしか
ぼくらは夏を
めぐっていない
それなのに、
ぼくらは
もう
夏のなかでしか
生きられないような
生きてはいけないような
焦りが
しずかに
かさなって
聞こえてくるのは
さざなみだけ
で
 言葉に
 できないものなど
 どこにも無いよ
 ただ
 ぼくたちは
 乾いていくから
 間に合わないことは
 数多くある
 うるおうことが
 言葉の権利で
 それを
 ぼくらは
 忘れやすい
さざなみは
正直すぎるうそつきで
ぼくらのつよさを
さらってく
優しい顔して
うるおって
夏を
無限に
語らせて
 
